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ベッドで横になったまま起き上がろうとしない、そのラムの様子からは、容易に疲れている事を感じさせた。
そんな彼女の腕の中。
「これが……俺の……息子か……っ」
「ふふ、可愛いでしょ?」
愛しき人の子は、あまりにも可愛らしい寝顔で眠りについていた。
その子の名はリコル。
暫くの間、オルグはその子を見つめながら幸せを具現化させたような表情を浮かべていたのだが、ハッと何かを思い出すと、おもむろに懐から小さな刀をだした。
その刀身は、蒼い空の如く清らかな輝きを放つ。
「あなた……それは──」
「ああ、『魔力』の量と『真名』がなんなのかを見てみないとな」
そう言って、オルグは小さなリコルの手に、小さな小さな傷を付けた。
寝ているリコルの指からは、深紅の血がにじみ出てくる。それはナイフを伝い──
「……」
そのままベッドに落ちた。
本来なら、ナイフに血が吸い込まれていき、特殊属性と魔力量に応じた光を放つハズなのに……。
「え……っ」
ベッドに深紅の憎しみが広がっていく。
魔力反応なし。特殊属性なし。その二つから導きだされる答えは──
「この、子は……【法邪】……なの、か?」
震えた声で、オルグが零した。
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