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少年の眼には、セミロング程の長さをした桃色の髪が映っている。少女、なのだろうか。
そして、その少女の前には四角に切り取られた大きな岩石の壁の様なものがあった。
その時、少女が振り向く。
「ちょっと待っててね?」
そのあどけなさの残る顔は、間違いなく少女のソレで。美しく可憐な顔立ちに、ピンチなのにも関わらずときめいてしまった。
しかし、その表情に心奪われたのもつかの間。次の瞬間に、発動する魔法に、今度は驚愕せざるを得なくなってしまった。
「『属性変化──炎』」
少女は岩石の壁に手をあて、そう紡いだ。するとどうだろう、岩石の壁は紅蓮の輝きを放ち──
(そ、そんな……まさか、属性変化……!?)
炎の壁となった。
灼熱の炎を飲み込み、少女の炎はさらに熱く、その大きさを増していく。
属性変化。出来る者は本当に少なく、繊細な魔力の操作と膨大な経験が必要とされる。
それをやりのけた少女。しかも、属性を変換する前の術式をねじまげたのだ。
もはや、天才と呼ばれる域に達している。
「ふふ……もう終わりかしら?」
その少女は、火炎を吐き出し、唖然とした表情のまま目を見開くクロノスドラゴンに、そう問い掛ける。
龍は、その言葉によって我に戻ったのか、首をブルンブルンと振り、目をパチクリとさせた。
そして首を横に振る。
「むぅ、残念だなあ」
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