1話 始まりは、この街だった。

9/10
前へ
/83ページ
次へ
  「住む場所を決める時にここにしようと言ったのはお前だろ。 文句を言うな。 それにこんな街に新しい建物が建ったら目立つだろ。 外見は今のままが1番いい。」 低い声でそう言ったのは向井恁(ムカイジン)。 少し口の悪い彼は、柴崎優太とは違い冷静沈着で、感情はあまり出さないため、無表情で無愛想だ。 切れ長の目や短めでくせのない髪もその雰囲気を助長しているのかもしれない。 「冗談だって。 そんな口煩く言うなよ。」 欠伸をしながら柴崎優太が言った。 少しだけ眉間にしわを寄せ、向井恁は諦めたように小さな溜め息をついた。 捻くれたガキを扱うのは疲れる……。 .
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加