プロローグ

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俺は、普通の人間には決して出来ないであろう、あることが出来る。 そうは言っても、たとえば空を飛んだりだとか、目から光線を出したり、瞬間移動・テレポートといった、化け物染みたことではない。 というのも、俺自身に備わっている能力とかではなくて、俺自身が行為・動作として出来ることなのだから。 まぁ、勿体振るのもアホらしいことこの上ないので、さっさと言ってしまうことにしよう。 俺はあるモノを持っているのだ。 実在する人物の名前を入力するだけで、その人物についてのあらゆる情報を、瞬時に得られるという、そんな特殊な機器をね。 恐らくというか、どう考えても普通ではないだろう俺の親族によって、この機器は開発された。 詳しくは言えないのだが(てか俺にもよく分からないのだが)何でも聞くところによると、俺の父親は情報関係に関連のある仕事をしているらしい。 まぁそんなことは、この機器からしておおむね想像つくだろうけど。 だが、それだけじゃあないんだな。 かなりの重役なのか、はたまた危ない仕事をしているのか。 どうやら相当にボロ稼ぎしているらしい。 その証拠に、父親は不定期に次々と家を建てているのだから。 それはもはや、別荘と呼ぶにしてはしっかりしすぎているものばかり。 もう、全部実家でいいと思う、うん。そうしよう。 俺が知っている限りで、実家の数はおよそ21といったところか。 ハハハ、何だか笑えてくる。 100%の割合で、これが嫌味になってしまうのは重々わかっているのだが、それでも言わずにはいられない。 こんな生活も慣れてしまえば、すぐに飽きてしまうものだと。 現在通っている学校から、最も近い位置に立地してある、7番目と思われる実家の三階部屋。居間なのかリビングなのか、よく分からないこの部屋にて。 入学式を終えて、暇そうにあくびをかましていた俺。 そんな俺を、まるで家政婦のようにして、偶然通りかかった父は見ていた。 そして、何か閃いたように接近してくると、こんな言葉をかけてきた。 「なんだなんだ、退屈そうじゃあないか。特別にいいモノをやろう、受け取るがよい」 そうして渡されたのが、先程説明したあの機器だ。 国内に住むすべての人間のデータがインプットされているとのこと。 
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