ケース1:長谷川みなみ

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あれからゴミはいつものように男子からからかわれ、それでも無抵抗だった。目はいつも以上に虚ろで何を考えているのか全く分からなかった。 学校が終わり家に着くと死神を名乗る男がベッドの上にいた。 「ふぅん、今時の人間界の女どもはこんな馬鹿げた部屋造りに凝っているのか。」 「ちょっ、あんた何勝手に入ってるのよ!」 声を荒げると同時に死神は消え私の後ろに姿を現した。 「あの女、順調に死に向かってますな。遮るものは最早何もない。そしてお前はそんな奴の気持ちを何となく感じ取っているから焦っている。当然さ~、いくら憎い奴でも死なれちゃあお前たちの悪行の数々がバレちゃうもんね。否、それ以上に人間の命なんかそんな軽々しい物ではないもんな。お前が焦るのは至極当然だな。」 死神は私の耳元で囁くように言った。気配はまた消え今度は目の前に現れた。 「この世に生を受けた手前の幸運を長谷川みなみに気付かせな。自殺なんて言う下らない死因で命を奪わなきゃいけないなんてこっちだってイヤなんだよ。いいな?めんどくさいから命令だ。やれ!」 死神は消えた。しばらく私は立ち尽くしていた。そしてまた動き始めた。ゴミの家はどこだっけ?
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