重い想い

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   仕事へ出掛ける彼の背中を笑顔で見送り、中と外を隔てる黒く分厚いドアがゆっくりと彼の背中を隠した。  外界を遮断され、ドアの向こう側からの音が僅かに聞こえる以外は、周りの音一つしない一人っきりの玄関。中へ戻ることもせず、私はその場に立ち尽くす。  本当は、仕事なんかに行って欲しくはない。  外界の目に、彼が晒されるのが嫌でたまらないの。  他の女が彼を狙っていそうで怖い。  彼が  私以外の女に惹かれそうで、落ち着かないの。  出来る事なら彼の行動全てを監視したい。でも、そんな事をして彼に嫌われたら……私はきっと生きていけない。  だから、私はこの家で彼を待つ。  部屋を綺麗に掃除して  彼の服を丁寧に洗濯して  彼の好きな食事を作って  大好きな彼を  笑顔で迎えるの。  ああ……だから早く帰ってきて。私の不安を吹き飛ばす笑顔を見せて。  早く、早く  私の元へ。
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