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どんよりと分厚く暗い灰色が、天に広がる澄みきった青と、青の中心で町を燦々と照らしていた眩しい光を覆い隠した。それと同時に今度は、ポツリポツリと体温を奪うような冷たい水が町に降り注ぐ。
先ほどまで明るく賑わっていた町も、打って変わって暗く静かな雰囲気を醸し出し。
ああ、空が泣き出した。
突然降り出した雨に慌てた様子で走り出す人達、雨宿りの為に近くの店へと入る人達を横目に、濡れるの構わず立ち尽くした私は雨雲が広がった空を見上げながら、そんな可笑しな事を考える。
時折、慌てる様子もなくその場に立つ私を怪訝そうに見るが所詮は他人ということで、少しでも濡れるのを避けようと直ぐに視線を逸らして去っていく人達。
それこそ私は怪訝する。
何故こんなにも綺麗な存在を避けなければいけないのか。
私の、汚い心を洗い流すような、乾き切った心を潤わせるような。
そんな綺麗で澄んだ存在を、
醜い私は避けたくない。
少しでも綺麗になりたくて。
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