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今日も地獄坂は長い。
雪菜の通う翔英高校は坂の上にある。
それも長くて急な心臓破りのてっぺんだ。
翔英に通う子息令嬢はお車送迎で毎朝楽してくるわけで、朝から一生懸命苦労して上ってくるのは運動部か一般庶民くらいだった。
ようするに雪菜は毎朝苦労して坂を上るわけだ。
「…死ぬ」
雪菜は自転車を押しながら坂を上る。
「雪菜-」
呼ばれて後ろを振り返ると暑苦しいウィンドブレーカーに身を包んだ少女が走ってきた。
「秋月おはょ」
南野秋月。同じクラスのスポーツマンで雪菜の親友だ。
「おはょ。今日もこの程度の坂で死にかけてるなんて運動不足ょ!剣道部に入りなさい!」
「嫌だってば!」
2人はぷっと吹き出した。
このやり取りで2人の朝は始まる。
いつもと変わらぬ朝は心地いい。
雪菜は秋月と学校へ向かった。
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