蛍光灯・首輪・弁当

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 その言葉で俺の我慢は限界を超えたが、俺も今年で21の大人の端くれ。冷静に反論した。 「俺、コンビニで働いたことあるけど、確か残飯を入れるところって常に鍵を掛けとくんじゃなかったっけ?」  店員の目に動揺の色が浮かぶ。それだけで、俺は勝利を確信した。 「くっ…」 「それじゃ、この犬連れてくぜ?いいだろ?」  店員は無言のまま悔しそうに、裏口から店内へと消えて行った。  ぐったりした犬を抱き抱えて、家路につく。幸い夜だったので恥ずかしい姿はあまり見られなかった。 「よかったな、お前…」  蛍光灯を取り替えて明るさを取り戻した家の中で、俺は犬に語りかけた。  犬に怪我は無く、あまり汚れてもいなかった。犬には詳しくないが、恐らくラブラドールだろう。ただ、大きさからして成長し切っていないようだ。 「まったく、俺が見つけなきゃ、首輪を外されて保健所に行くところだったぞ?」  そんな事を言いながら首輪を念入りに調べていく。しかし、住所や電話番号といったものは一切書かれていなかった。
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