蛍光灯・首輪・弁当

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「お前、困った奴だな~。住所や電話番号どころか、名前も分からないじゃないか」  俺は黒い犬の首辺りを突きながら、考えを巡らせていた。  飼い主が見つからないと、自由にしても保健所に行く事になるかもしれない。それに、何だかほって置けなかった。 「仕方ないなぁ…、お前しばらくここに住むか?」  犬に尋ねたところで、返事が返ってくるわけでもないが、俺は取りあえずそうすることにした。 「いつまでもお前じゃなぁ…、そうだ!!ごみ箱漁ってたから、お前の名前はジャンクなっ」  一瞬だけ、こんな名前を付けられた犬が憐れに思えたが、あまりにしっくりくる名前だったので、そんな事はすぐに忘れてしまった。 「なぁジャンク、お前、腹減ってないか?」 「ワンッ」  俺がコンビニの袋から弁当を取り出すと、ジャンクは足元でクルクル回り始めた。 「はいはい、落ち着けって。今日はドッグフードが無いからこれで我慢してくれ」  俺は犬が食べるといけないものを除いた後、半分を大きめの皿に乗せてジャンクの前に出してやった。
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