蛍光灯・首輪・弁当

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 拾い上げた紙には、女性のものと思われる丸文字で切実な想いと、願いが綴られていた。 『犬を探しています』  その文字を見た時、すぐにジャンクの飼い主だろうと察した。 「ジャンクぅ~、良かったな!!飼い主がお前を探してるってよ」  俺のすぐ横で大人しく座っていたジャンクが、体を乗り出して手書きのチラシを覗き込む。紙をジャンクにも見える位置に持って、続きを読んだ。 『1歳1ヶ月の黒いラブラドールレトリバーで、赤い首輪を着けています。性格は大人しくて、とっても賢い犬です。食事を持ってくると足元でクルクル回るという癖があります。ちなみに、名前はトラッシュといいます。もし見つけましたら、下の番号に連絡してください。お願いします。 ××××‐××‐××××』  声に出して読みながら、ひとつひとつ特徴を確認していく。 「トラッシュ」 「ワンッ」  最終確認に元の名前で呼んでみると、すぐに返事が返ってきた。なんだか悔しかったので続けて呼んだ。 「ジャンク」 「ワンッ」  自分が付けた名前で反応してもらえて、俺は少し嬉しかった。
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