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立て続けに聞こえる地面を叩く音。久しぶりの大雨に気分は心なしか沈んでいた。
「ふぅ…、明日から休みだっていうのに、さい先悪いなぁ」
いつもは自転車で通っている道を、傘をさして一人で歩いていく。地面で跳ね返った水滴が制服の裾を濡らし、気分をよりいっそう滅入らせる。
そろそろバスの停留所が見えてくるはずだ。とにかく落ち着いて座りたかったので、自然と早足で歩いていた。
「…あれ?」
バスの停留所にいたのは見たことのない制服の、小柄な少女だった。
「…」
少女は髪の毛を左右で三編みにしている。少し伏せたまぶたには、哀しみの色が浮かんでいる。
あり得ないことなのに、まるでこの少女の哀しみが雨を降らせているような、そんな気がした。
「…あの、…」
僕はそこで我に返り、開きかけた口を閉じてベンチに腰を掛けた。
もともと人と話すのが苦手だし、わざわざ知らない少女に声を掛ける理由もなかったので、暫く黙ったままでいた。
どうせバスが来るまでの短い付き合いだ――
そう思っていた。
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