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「ふふっ、何だか私たちみたいですよね?」
哀しげだった表情から一転して、少女の顔が明るい悪戯っぽい表情になった。
「うん、そうだね」
少女の笑顔を見ていると何だか暖かい気持ちになって、沈んでいた気分も浮いてきた。
その後も、その物語の内容で二人の会話が止まることはなかった。誰かと話していて、心地いいと思うのは初めてだった。
このままずっと、バスが来なければいいとさえ思った。
「あっ!バスが来ましたよ」
少女はそう言うと、期待に満ちた表情をしてバスの方を見つめた。
しかし、バスが目の前に止まって誰も乗っていないのを見ると、再び哀しげな表情になった。
「さぁ、行こうよ」
少女が黙って首を横に振る。表情が今にも泣き出しそうになった。
「いいえ、私は待っているんです。だから、バスには乗れません」
そう言う少女はとても苦しげで、胸を刔られるような痛みに堪えているようだった。
バスの乗客がいないこともあって、運転手は僕らの会話に耳を澄ませていた。
「二度と、私の許に…帰らない人です」
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