雨・三編み・文庫本

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「うん!待ってます。私ずっと待ってますから」  涙で頬を濡らしながら、朗らかに微笑む少女の瞳を見つめたままバスの中に入って行く。  バスの扉が音を立てて閉まる。扉が閉まってからも、バスがゆっくり動き出してからも、僕は少女を見つめていた。 『ありがとう、またね』  少女の唇がゆっくりと、だけど確かにそう告げてくる。僕は無言のまま、そっと頷いた。  僕は一番近い席に座り、空を見上げた。そこには雨上がりの美しい虹が架かっていた。              <終>
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