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「おーい!!」
青年に呼ばれて、
一人の少女が振り向く。
大きな瞳――
高く整った鼻――
ピンク色をした唇――
まだ少し顔立ちに幼さが残るが、女らしい、綺麗な顔立ちをしている。
「またココにいたんだ…」
「……」
少女はその場に跪き、固く口を閉ざしている。
目の前にある二つの墓石に埋まっている綺麗な宝石をただじっと見ていた。
青年はそうなることをわかっていたのか、彼女の肩に手を置き、腰をかがめて優しい声で言った。
「もう帰ろう、シィア」
シィアと呼ばれた少女は青年を見上げ、か細い声でぽつりぽつり言った。
「でも……。
でもココにはお父さんとお母さんが…」
「わかってるよ」
慰めるように言った青年の声が逆に気に障ったのか、少女はカッとなってまくし立てた。
「…っ!!
いいえ、貴方はわかってないわ!!!
"私たち"の両親は、この冷たい土の中で眠っているの!!
もう誰もいないの!!
親も、仲間も、友達も……っ」
少女は途中で言葉をつまらせ、顔を歪ませた。
青年はそんな彼女の肩を抱き、優しく頭を撫でた。
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