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「そうだね。
――でも、いつまでもココにいるわけにはいかない」
「そんなの……わかってる、けど「シィアの方こそ、わかっていないよ」
口ごもる少女の言葉には聞く耳もたず、再び諭すように続けた。
「もうこの国には何も無いんだ。
水も、食べ物も、服さえも…」
少女は青年の腕の中で俯く。
そしてまた弱々しい声を出して尋ねた。
「なら、どうすればいいの……?」
「……」
青年が少女の顎に手をかけ持ち上げた。
少女の顔が青年の青い瞳にしっかり映った。
「"外"へ行こう…!!」
「…え?」
「"外"に出るんだ。
"外"ならきっと俺たちの生きる道があるはずだよ」
"外"の世界は、この国では禁じられた場所であった。
古くから守り続けられていた魔の力により国の中はいつも絶対的に安全だった。
そのため、国を囲っている塀から外に出るのは危険とされ、大抵の子供は一度も"外"へ行ったことが無かったのだ。
彼らもまたその中の一人だ。
出た事は勿論、覗いた事すらない。
しかしその青年は"勇気"があったのだ。
彼ら…いや、この国にとって未知であるはずの、"外"に行こうとする勇気。
恐らく彼は、国の中ではもう生きていけないと分かったのだろう。
だからなんとしてでも生きなければと、逃げたくなる現実から目を逸らさずに、必死に向き合おうとしているのだ。
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