第一章 💠セルミア国💠

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――トリース…それはセルミア国に伝わる『成人の儀式』の事。 セルミアでだけ採れる宝石レイズに、自らの右腕に傷つけた血を一滴落とす。 レイズは最初無色透明の透き通る様に綺麗な石だが、血をつける事によって色が変わる魔宝石だ。 それも血に含まれる様々な分子の割合に細かく反応するので、一人一人全く違った色が生まれる。 そしてレイズが色を示したら、今度はそれで装飾品を作るのだ。 レイズを手に持って腕輪や指輪など、自分が生製したい形状を思い浮かべながらそれに魔力を与える。 するとレイズはそれに応えて形を変えるのだ。 例えを言えば、青年が首にかけているチョーカーのトップに光る十字架。 これは彼の勇気や気勢、力強さをしめす真っ赤な色をしている。 シィアの父親は一見すると金色の腕輪をしていた。 だが良く見れば、それは威厳ある黒光りする藍色をしていた。 また母親は彼女のように優しい、柔らかい桃色をした指輪をはめていた。 ちなみにセルミアでは16歳の誕生日にこの儀式を受けることになり、当然この国で言う大人というのは16歳からだ。 自分で自分を切りつけられない者、痛みに耐えられない者は一人前として認められない。 己の色に染めて装具を生み出す。 そこで初めて大人と言えるようになるのだ。
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