150人が本棚に入れています
本棚に追加
…ただ少女の頭の中を駆け巡るのは、その場に大切にしてきてくれあ人達がいないというその事実だけだった。
「シィア、俺は"外"に行きたいんだ。
"外"に行ってこんな一方的な戦なんてなくて自由に、そして幸せに暮らせる世界へ行きたい。
いくら故郷が恋しくても、ただそれだけにしがみついて飢え死にするのだけはごめんだ」
彼は息つぎ一つせずそう言うと、一呼吸置いて続けた。
「でも、それはシィアが一緒じゃなきゃダメなんだよ。
…お願いだ。
俺と一緒についてきてくれ!!」
青年は少女の肩に手をやり、頭を垂れた。
少女は自分より頭ひとつ分青年を見据える。
彼はもう一度掠れた声で…しかしハッキリと言った。
「ついてきてほしい、シィア」
顔を上げた青年の目を見つめる。
透き通るように綺麗なそのブルーアイは、決して迷いも嘘も無い。
「――よろしくお願いします、ジャス」
少女は右手でスカートをつまみ、左手をななめ左下に伸ばす。
青年もそれを見て、両手を真横より少し下気味に伸ばした。
次に彼らは同じタイミングで、少女は左手を、青年は右手を胸のところまで持ってきた。
そして少女は右足、青年は左足を半歩前に出して、両膝を折って礼をした。
最初のコメントを投稿しよう!