~蝶々と蜘蛛~

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 男の人は恋人には第一美貌を求めるに決まってる。自分で認めるのも虚しいけれど、私は男性から一目惚れされるような顔じゃない。  私に異性を感じるなんて――有り得ない。 「ほら、やっぱり信じない」 「!」  一瞬でパニックを起こした私の脳内状態を、いともあっさりと言い当てた。無邪気ながらも意地悪な微笑みを浮かべて。私の顔に止まった目が細まる。  まるで同級生の女の子をからかって楽しんでる小学生……  ……ああ、なるほど。そういうことね。  麗人の告白に動揺していた心が、ようやく冷静さを取り戻した。急速に頭が冴える。 「あの……」 「ん?」  ああ、清々しさに溢れた彼の笑顔が憎らしい。  握手を交わす前でよかった。関りを持ってから聞いていたら、言えなかったかもしれない。 「人のことからかうの……やめてくれませんか?」  軽く睨み、遊び半分に近付いてくる彼を拒絶した。  友達にはいつもからかわれる側の私でも、流石にこういう冗談は好きじゃない。自分が見下されているような、軽く見られているような、不愉快な気持ちになる。大体、ついさっき顔と名前を知った人の告白なんて、どうやって信じろって言うの。
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