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何故ならばカーバンクルは例外的に幻影世界から直に召喚された存在だからである。それが事故なのか望んで来たのかはわからない。しかしカーバンクルは気が付いたら遠矢の側にいたのである。
つまり、カーバンクルは人間に遭遇したのは遠矢が初めてなのである。当初は目の前にいた遠矢に警戒心を抱いていたが数日時間を共にするに連れて遠矢の人柄と魔力に引かれていったのだった。
カーバンクルと言う種族は本来は臆病な種族で防御と探索能力に優れているのだが、このカーバンクルはなぜか探索能力は並みで防御能力が高い個体でいろいろ謎が多い存在である。
遠矢はカーバンクルの反応に黙って手をカーバンクルの頭の上に乗せた。
ポンポン。
遠矢「まだ不安なのか? お前はもう見知らぬ世界で一人ぼっちではないだろう? 俺だっているし、ハクやキュアービーストだっている。信じろよ俺達を。」
カーバンクル「違うんだよ。そう言う事じゃあないんだよ。私は………。ううん。何でもない。」
遠矢はカーバンクルの悩む様を見て思わず笑みを浮かべた。
遠矢「何だかお前のおかげで緊張がほぐれたよ。何が起きても生きて帰るぞ、カーバンクル!」
カーバンクル「そうだよね。遠矢には目的があるんだもんね。私にもね。私は遠矢の目的の為に力を貸すって決めたんだから………。」
そう思うと緊張も冷や汗も吹き飛んだ気がした。
カーバンクルは耳をピクピクさせ目標のあやかしの場所を探る。
カーバンクル「遠矢! この先の霧の結界を破壊して! その先の空間にいるよ!」
遠矢はカーバンクルの助言に耳を傾けると背中の剣を鞘から抜いた。
遠矢「全てを覆い隠す霧の結界が仇になったか。迂闊に結界を破壊すれば目眩ましの意味は無くなる ………。どうするか。」
遠矢(あれを使うしかないようだな。)
遠矢は胸のペンダントに手を当てると何かを呟いた。
遠矢(時を渡る風よ………。我を望む場所へ導かん! 時の門開放!)
遠矢が言葉を唱え終えるとペンダントから黄金の光が溢れだし遠矢とカーバンクルを包み込む。 そして一瞬のうちに遠矢達の姿がかき消えた。
シュン。
遠矢「…………成功したか? 辺りは何も見えないな。カーバンクル! いるか?」
カーバンクル「ウゲーッ、何だったの今のは? 気持ち悪いよ~。」
遠矢「大丈夫か? そう言えば初めてだったな? どうだった? 空間を渡った感想は。」
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