異世界から来た者

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すると、途端にベイルードの顔が驚きの顔に変わった。 ベイルード「そうか、そうだったのか。お前がエルシャンクが言っていた。次元を司る者の素質を持つ者。クックックックッハッハッハッハッハッハッ。何と言う天恵だ。私の求める者が目の前に現れるとはな。」 ベイルードの眼差しが不意に優しい物に変わる。ベイルードは大きな声で笑うと何かに納得したようだった。 ベイルード「だが、時が満ちていない。まだ早いか。俺はすぐに帰らねばならんのだ。次元を乱す存在を守護者として許す訳にはいかんのだ。頼むよ、エルシャンクの弟子よ。俺を送り返してくれれば礼の一つもしよう。」 遠矢はベイルードの困ったような顔に少し戸惑った。力を使えば確かに送り返す事は可能かもしれない。だが力を使い過ぎれば代償は計り知れない。遠矢の持つ力とはそう言う力なのである。 カーバンクル「ねえ、遠矢。次元竜さんは嘘はついていないわよ。私からもお願い。助けてあげて。」 遠矢はカーバンクルの願いを心で感じた。 遠矢は無意識にペンダントの石を握ると覚悟を決めた。遠矢のこの覚悟と出会いが後の歴史の分岐点になろう事とは今の遠矢に知るよしはなかった。 遠矢「ベイルード!エルシャンクの名にかけてあんたを送り返してやるよ。必ずな。」 遠矢は決意を顕にするとペンダントを握り締めた。 遠矢(だが、どうする? これほど高位の存在を送り返すには力が足りない。結界ポイントを使うしかないが………。) 遠矢「ベイルード! 代償はどうするつもりだ? 俺の送還術は送還主の力の一部をもらって送還主の世界の情報を得る術式なんだが。いかに俺でも地図なしで送り返す事はできない。」 ベイルードは少し考えると口を開いた。 ベイルード「すまないが立場上、俺の力を与える事はできん。だから次元に干渉し穴を開いてくれればそれで良い。」 遠矢「ちょっと待て! 今、次元に干渉して 穴を開けろと言ったか? 無理だ! 仮にできたとしても閉じる事はできない。」 ベイルード「穴を開いてくれれば後始末は任せろ。我がすぐにふさいでやる。我は次元を司る者だ。次元の穴を修復するのは容易い。ただ、我は次元空間でなければ能力を発揮出来んのだ。」 遠矢「つまり、あんたは普通の世界では力を完全に発揮出来ないと言う事か。」
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