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俺は草薙隊長にそう告げると黒い柱が現れた方向に走り出した。
「二人とも! 無事でいろよ!」
俺は走りながら立ち上る柱を再び見る。
「この現象はあの時と同じだ。急がないと。」
ガシッ。
俺は無意識に背中の愛剣を握りしめた。
「………あの人じゃ無いよな。」
俺はふととある人物を思い出していた。その人物はかつて俺が出会った異世界の戦士である。
「…………あれほどのゲートが開いたとなると一人じゃあ危険だな!」
俺は懐から一枚の札を取り出すと空に掲げた。
(頼むぞ! 相棒。)
「汝、白き衣をまとい霧の獣よ。我が盟約に従い今ここに現れ出でよ!汝の名、ホワイトフォックス。」
遠矢が術を唱えると空にかざした札が光を放ち炎に包まれる。そして天空に魔方陣が浮かび上がり空から白い柱が現れた。
???(遠矢! 呼んだかい? 僕を呼ぶなんて珍しいね?)
遠矢の目の前に現れた獣は白い狐で人語を話していた。遠矢は臆することなく狐に話し掛けた。
「すまないな。ハク! 急に呼び出したりして。」
ハク「それは良いんだけど……… 要件は?」
ハクは遠矢を見詰めながら話し掛けた。
「呼び出して早速だが、霧の結界を頼む。」
ハク「わかった。でも気を付けてね。この魔力の気配は上級あやかしの物だよ!」
ハクはそう言うと術を唱え始めた。
ハク「……………ミスティックフィールド!」
ハクがそう言葉を紡ぐと一面が霧に包まれ始めた。
ミスティックフィールド。この魔術は結界内に霧の迷宮を発生させ、敵を足止めさせる中級魔術である。
「これでしばらくは持つだろう。さて、本部が動く前に何とかしないと! しかし、ここまでデカイ魔力反応は師匠以来だな。何かの前触れか?」
俺はそう考えると懐からさらに数枚の召喚札を取り出す。
何を隠そう俺は表向きは組織の末端の隊員だが裏の役職は幻影使いだ。俺の任務はこの世界に事故や何かでで現れた異世界の者を保護または送り返す事だ。この事を知るのは組織の内部でも数人である。
「さて、ハク、行くぞ! 」
ハク「分かった。でももう一体は呼んだ方が良いよ? ゼラードが良いんじゃない? 彼は近接型だしね。」
遠矢はゼラードの名を聞いて少し躊躇した。
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