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「久しぶりだなー純也。元気だったか?」
「どうも。お久しぶりです」
俺は当たり障りのない挨拶を返す。正直言えばあまり関わりたくないというのが本音だ。
「ところで純也。お前中学卒業したらどうするんだ?」
「さあ。考えてないです」
俺がそう言うと先輩は、やっぱりな。みたいな顔をした後、ニヤリと笑って口を開く。
「まあ、高校行くにしても、プーになるとしても俺たちのチームに入れよ」
本当は暴走族のことだと分かっているが、なんとなく聞いてみる。
「チーム?」
「あー。暴走族だよ。隣街を本拠地として活動してるんだけどな。まあ、入りたくなったらいつでも俺に言え」
「はぁ。分かりました」
俺がそう言うと、先輩は
「じゃあ、またな」
と言って改札の向こうへと消えて行った。
赤信号みんなで渡れば怖くない。なんてよく言うが、本当にその通りだ。
きっとあいつは怖いんだ。
あそこの暴走族に入っていれば、どこどこのあいつらには威張れるからとか。多分、そういうメリットがあったのだろう。
先輩は赤信号を渡る連中に混ざり安心感を得た訳だ。
でも。
でもそんなに安心感が欲しいなら青信号を渡ればいいんだ。正しい道だけ進んでればいい。
だが、今の世の中青信号を渡る奴の方が少ないから、それだけで不安なんだろうな。そう思った。
いつだってそうだ。長い物に巻かれろ。ここじゃあ、正しいことをする奴より間違いを犯す奴の方が多い。
ただそれだけだ。
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