善、悪

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家に帰ったのは午後七時を少し過ぎた辺りだった。 家の鍵は開いていたが中に誰もいない。まあいつものことだが…… 居間に行くと、テーブルの上に千円札がポツンと一枚だけ置かれていた。 そこにメモがあるわけでもなくただ一枚だけ寂しく…… 母親が帰って来ない夜はひたすら怖かった。 このまま一生帰って来ないんじゃないのか? そう思って俺は泣いていた。昔の話だ。 でも長くても一週間程あれば母親は必ず男を連れて帰ってきた。 いつもいつも俺を伺う様に横目でちらりと見て、笑い掛けてくる。 今日は千円…… 遅くても明後日には、帰ってくるだろう。 そう思って冷蔵庫から卵を出して、温めたフライパンの上に落とす。 目玉焼きを作り、白米を茶碗に盛り、独り寂しく 「いただきます」 と呟くと箸を伸ばした―――――― 「ごちそうさまでした」 また独りで呟く。 そして携帯を手に取ると、同じ学校の女をメールで呼び出した。 テレビを見ているとインターホンが鳴る。俺は扉の向こう側の人物に聞こえるように 「入れよ」 と一言。 すると、ガチャっとドアノブが音が鳴り、女が入ってきた。 「どうしたの?」 「別に。やりたくなっただけだ」 「なんだ。そんなことかっ。いいよ~」 そう言った女を俺は押し倒す。 別に彼女でもなんでもない。ただこの女は軽いから…… まるで俺の母親並みに…… 別に気持ちなんて必要ない。ある程度の顔のレベルなら誰だっていいんだろう。お互い。 俺は女の上着を脱がせ、ブラを取ると、小さな胸を揉みほぐし、パンツの中に手を入れた。ビクッと反応する女。 それからは適当に。前戯もクソもない。ただ自分の要求のままに、自分勝手に抱いた。 行為が終わると女は寝てしまった。 遠目で見るなら化粧でなかなかのレベルだが、近くで見れば全然たいしたことない顔。 「不細工」 俺はそう言って目をつむる。 初体験は中一の時。当時付き合っていた先輩とやった。 初めて見た異性の性器や、女体の柔らかさには驚いたが、今思えばなぜあんな簡単に捨ててしまったのだろうと思う。 あの頃は色んな物に興味があって…… 初体験だろうが相手なんて誰でもよかったんだ。 結局俺も薄汚い人間だ。
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