善、悪

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起きると朝になっていた。昨日の女はもう隣にいない。帰ったのだろう。 別に行きたい訳じゃないが、俺は学校に行く支度を始める。 準備が終わり学校へと向かう。何も変わらないただの普通の一日。 毎日毎日同じことの繰り返しだ。人との触れ合いも特にない。楽しいこと? ある訳がない。 別にこんな人生なら明日でも今日でも、いつ死んでもいい。どうせ誰も涙を流すことのない命だ。 ただ。ただ少しだけ……あいつは。母親は泣いてくれるんじゃないか? って、淡い期待だけを持ってる自分に哀しくなる時がある。 学校に着くと俺は教室には向かわず、体育館裏へと向かう。 そしてそこに近づいてきた時。よく耳にする鈍い音が聞こえた。 多少疑問に思うものの、たいして気にもせずに俺は歩を進める。 体育館裏に着くとそこには二年の男が三人で、一年の男をリンチしていた。 多分、理由は調子に乗ってるからムカつく。だとかそんな理由なのだろう。くだらねえ。ホントにくだらねえ。 リンチされている奴は俺を見た瞬間、助けを求めているような目で俺を見たが、すぐに俺はその目から目を逸らす。 そんな俺に二年の男たちは気づくと礼をしてきた。 「純也さん。お疲れ様です!」 「おう」 「今生意気な一年を絞めてるんですけど、純也さんもどうですか?」 「そうだな。じゃあ一発」 そう言って俺は立ち上がると、恐怖で怯えた目をする一年の脇腹を蹴る。 「おー!」 「今のはクリティカルヒットだ!」 「純也さんはやっぱり流石ですね!」 と俺に讃辞を送る二年たち。何が流石だ。バカばかりだ。そう思いながら 「別に」 と言うと、煙草に火をつけた。 蹴った理由? なんとなくイライラしてたから。相手の痛み? 他人の気持ちを考える余裕もない。 人を殴るのにはたいした理由もない。 落ちこぼれ。人間としてみるなら間違いなく俺は屑だ。 「不良」 そんな言葉で納めるには物足りないほど、荒れていたと思う。 人から疎まれ、避けられ、憎まれを繰り返す人生だ。誰が悪いかなんて言わない。だから、俺がここまで落ちこぼれた理由も言う必要はない。 ただ同じことを繰り返し、ただ負の感情だけを感じる人生。本当に……いつ死んだって構わない。
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