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今まで何人、俺には父親がいただろうか?
小学二年の辺りから、俺の母親は頻繁に家に男を連れて来るようになった。
来る人来る人みんな父親を名乗る。しばらく一緒に住んだり……
小学四年の秋頃に来た父親は、俺の誕生日にプレステを買ってくれた。
小学六年の春頃の父親は、かなりの酒豪で酔うと母親を殴ったりしていた。とにかく酔えば恐ろしい人で、当然俺がなつくはずもなかった。
「息子がなつかねえ!」
そう言って母親を殴るのだ。だいたい、俺は父親を名乗ってた誰にもなついたことがないだけだ。
もし、今のままあの頃に戻ったなら
「気安く息子なんて呼ぶんじゃねえ」
と言って殴っていたかもしれない。
とにかく俺には色んな父親がいた。
優しい奴や怖い奴。金持ちの奴。頭がいい奴、頼りない奴。変態や特に特徴もない奴。実際、全員覚えている訳じゃない。
そして俺が母親を母さんとか、お袋とか、そんな呼称で呼ばずに母親と呼ぶのには理由がある。
俺の母親はその男のタイプによってコロコロと性格を変える。
小さな頃からそんな母親を見ていくうちに、俺は母親が元はどういう性格の人だったのかさえ忘れてしまった気がする。
だから、俺は他人のように自分の実の母を母親と呼んでいる。
正直、妬いてるのかもしれない。もっと俺を見て欲しくて、もっと普通に接して欲しくて……
何か目立つことをすれば叱ってくれるから。俺に構ってくれるから……
でも、俺が何かして警察に捕まった時なんかは、いつも隣で泣いているだけで……
どうして欲しいのか。どうなりたいのか。それさえも明確に解らないまま、俺も俺じゃない事ばかりやり続けてる。
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