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「ニャー」
格子の付いた小さな窓から見える世界。
そこは偽世界で、この部屋だけが私の現実。
それでも時々、偽世界へ手を伸ばしたくなる。
それは仕事が終わる時間や、仕事を待っている時間。
その度に私は窓の外を眺めては、ニャーと鳴いてこの辺りに住み着いている猫が顔を出すのを待った。
ニャオ‥
‥―!!?
微かに聞こえた猫の声。
手を格子の隙間からぶらりと落とし、夜風を感じていた私の手は、格子を強く握り、隙間から猫の姿を覗き見た。
が、小さな窓からはその姿が確認できない。
もう一度鳴いてみると、先程よりも近くで猫の声が返ってきた。
私を、仲間だと思ってくれてるの‥?
私は嬉しくなって、何度も何度も鳴いてみせた。
ガサッ―‥。と物音がした。
窓の外で何かの気配を感じる。
猫がそこまで来ている?
しかし、人間の姿が見えると近寄ってはこないだろう。
私は窓の下にしゃがみ込み隠れて鳴いた。
微かに聞こえた小石を蹴る音。
猫が窓の下に居る。
緩む顔と、焦る気持ちを抑えつつ、私はゆっくり窓の外を覗いた。
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