160人が本棚に入れています
本棚に追加
/98ページ
「わっ!」
猫を驚かせる私の声と、逆に“猫”の姿を見て驚いた私の声が高く大きく響いた。
「…人 間‥」
猫の代わりに目の前に立って居たのは刀を腰にぶら下げた侍。
その侍は私に驚き、ククッと喉を鳴らして笑いだした。
フッ‥
それにつられて私も笑う。
あまりの可笑しさに涙が出てきて、それを着物の袖で拭ほど笑った。
ダ
ダ
ダ
「しっ」
足音‥
廊下から足早に近づいてくる足音に笑うのを止めた。
それと同時に部屋の襖がスパーンと勢い良く開く。
「‥おや、 可笑しいね。
確かに笑い声が聞こえたんだけど…」
きらびやかな赤い着物を身に纏い、
漆黒の髪は綺麗に結われ、刺さった金色の簪(カンザシ)がゆらゆらと揺れる。
この店一番の売れっ子、百合花(ユリカ)だ。
彼女は私しか居ない部屋をまんべんなく見回し、眉をしかめる。
「外に誰かいるんじゃないでしょう、ね?」
.
最初のコメントを投稿しよう!