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月が天へ昇る時、
遊女達の仕事が始まる。
三味線や太鼓の音があちらこちらの部屋から鳴り響いた。
吉原遊郭では最高の位の遊女を花魁(おいらん)と呼ぶが、
吉原遊郭から離れた女郎屋では高級遊女は太夫(たゆう)と呼ばれた。
此処では売れれば売れるほどいい客が付き、いい処へ身請けされる。
姉遊女が口癖のように禿(カムロ)と呼ばれる子供達へ教え込む。
まだ十にも満たない幼い禿達は太夫を目指し、姉遊女を見習うために客の座敷へと赴く日々。
しかし、客によっては深夜まで宴の席が続く。
百合花が仕切る宴会の席で。
コクン‥
座敷の隅で禿が居眠りをし、頭が前後に揺れはじめていた。
小さな子供であっても客に買われた身。
「たまき、炭をとっておいで」
百合花の目がこの禿に行き届く前に、
姉遊女の一葉(カズハ)は“目を覚ましなさい”と意味を込めて禿を廊下へ出した。
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