‥―弍ノ章―‥

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  ギシリ‥  ギシリ‥ 歩く度に不気味な音を立てる廊下も、 此処へ売られて5年目の私の耳には、既に音色の一部になっていた。 その廊下を歩く私の眼に、 小さな中庭を眺め、佇む禿が映った。 それは絵から飛び出してきたかと思わせる程、風情に溢れている。 ‥―あの子は確か‥、百合花の‥。 居眠りでもして追い出されたのかな? 私が近づいても気がついておらず 「たまき」 名前を呼ぶと虚ろな眼を擦りながら振り向いた。 「もう少しだからね」 早く戻りなさい。と言う意味の言葉を投げると、 コクリ。と頷く。 「‥いいこ」 小さな頭を撫でると、 まだ甘えたい年頃のせいか、私の袿(ウチカケ)をギュっと握りしめてきた。 「‥‥戻ろうか」 それ以上何も言えず、私は禿の小さな手を引き座敷へ返した。 .
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