南の都 ~異国の少年~

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「ホント……いい先生だよなぁ……。」 図鑑を貸し、更にはこんなに凄そうな杖まで貸してくれた。 「さて……さっさと集めるか。」 やっと森の入り口に着いた。 森は都を挟んで家の反対側なので来るのが面倒くさい。 「えーと……何採りゃいいんだっけ……?」 森の中をリストを確認しながら歩く。 ちょっと薄暗くて読みづらい。 「ん?松茸?姉ちゃんめ……食材の調達もさせる気か……。」 一番面倒くさそうなのは松茸。 まぁ、この森ではそんなに珍しい物でも無いのだが。 ……と、その時。 ガサッと草が揺れる。 「……ん?」 茂みでの物音。 まだ少し草は揺れている。 「……動物?」 念のため、杖を構えながら茂みに近付く。 が……しかし。 「!?」 ガサッと黒い影が飛び出す! ……リス。 茂みから飛び出したのは黄色の小さなリスだった。 「……びっくりした……。脅かすなよな……。」 愚痴ってみるが、リスはあどけない表情で私を見ている。 なんか可愛い。 「……あ。食べる?」 リスに赤い木の実を差し出してみる。 もちろん人間の口には合わない種類だ。 「……あ!」 リスは私が動いたと同時に逃げ出した。 人間に警戒しているのだろう。 ……と、その時また。 「ん?」 ガサッと後ろの茂みが揺れる。 またリスか何かだろう……と思ったのだが。 「!!」 そう思って振り返った。 だが、そこに立っていたのは動物などではなかった。 カシャン、カシャン、と規則的で無機質な音を立てながら歩くソレ。 人の形を模した機械人形。 ウィーン……と、無機質な音を不気味に響かせながら、その首がこちらに向く。 「高エネルギー発見。タダチニ回収ヲ開始シマス。」 ガシャン、と右腕の部分が組み変わる。 右腕は大きな刃物に変形していた。 「ヤバっ……!」 一瞬で危険を察した。 『殺される!』と。 相手は機械なので意志はないだろうが、ギラつく刃に背筋が凍った。
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