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走り始めた美羽だったが、一度家に帰って“木村早紀”からの手紙を取って来ようと思った。
手元に置いておくと、見るたびに辛くなりそうなので、それも一緒に航生に渡そうと思ったのだった。
―――
美羽は走って自宅に着き、慌ただしく自分の部屋に入った。
そして机の上に置きっぱなしの手紙を手に取り、しばしの間たたずんだ。
今更ながら、この手紙を渡したら、航生と触れ合うことは無いんだなと思ってしまう。
抱き締められた事も、おでこと頬にキスされた事も、みんな思い出に変わってしまう。
美羽は手紙を握り締めた。
…今は考えちゃダメだ。
考えたら先に進めなくなる。
決意が揺るがないように自分の迷いを捨て、美羽は部屋を出て、航生の家に向おうとした。
コンコン
「美羽?」
扉がノックされ、母親に話し掛けられた。
「何?」
美羽が扉を開けると、そこには母親と一緒に航生が居た。
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