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長く、やさしく重ねられた唇が離れ、美羽はうつむいた。
航生は美羽の涙を拭うと、衝撃的な事を言い出した。
「あの赤ちゃん、俺の子じゃないと思う」
「………え?」
美羽は目を瞬いた。
嬉しいよりも責任逃れ?と一瞬航生を疑ったが、疑問はすぐに解決できた。
航生は着ていたセーターを脱ぎ、Tシャツ姿になると、美羽に腕を見せた。
航生の腕には、本人が言っていたように、ほくろが3つ並んでいた。
肩に1つ、腕に1つ、手首に1つと縦に3つ。
そして写真に写る赤ちゃんの腕には、腕を曲げる所に横に3つ並んだほくろ。
………え。
「ほくろが3つあるけど位置が全く違うから…」
航生は言いづらそうに言うと、美羽の頭に手を当てた。
「……」
ちょっと待って…
じゃあ、航生くんの子供っていうのは私の勘違い?
美羽は恥ずかしさのあまり、顔を上げられなかった。
航生は、セーターを再び着ると、木村早紀と赤ちゃんが写る画面を見た。
は、恥ずかしいっっ
何やってんだろ、私っっ
一人で勘違いして、落ち込んで…
「美羽、ありがとう」
航生は恥ずかしさに俯く美羽の頭をやさしく撫でた。
「……」
「美羽のおかげで早紀と赤ちゃんが元気に過ごしてるのが分かったから、すごく嬉しい」
「……」
「本当はずっと不安だったんだ」
俯いたままの美羽に航生は心境を話し始めた。
「不安?」
美羽はチラッと航生を見た。
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