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「うん…」
航生は画面に目を戻すと、
「俺が早紀を責めてしまった時、この赤ちゃんは早紀のお腹の中に居たのに、精神的に追い詰めるような事をしちゃったから。…赤ちゃんや早紀の体に影響させたかも知れないって不安だったんだ」
「…無事に産まれてきて、本当に良かった…」
航生は画面を見つめたまま“産まれてきてくれてありがとう”とつぶやいた。
「会いに行って、伝えたら…早紀さん、喜ぶんじゃない?」
美羽は航生の横に並び、画面を見た。
「分からないな」
航生はつぶやいた。
「航生くんが反省してるって分かったら、早紀さんは嬉しいんじゃない?」
美羽は航生に意見を言ったが、
「…俺も初めはそう思ってた」
と航生は美羽を見て返した。
「初めは?」
「うん…初めはそう思ってたんだけど、早紀が行き先を誰にも告げずに去って行ったのは、誰にも会いたくないからだと分かって。まだ、精神的に立ち直ってないのかも知れないし、早紀の状況は俺には分からないけど…」
航生は一息付くと続けた。
「いや、分からないからこそ、そっとして置いた方がいいかもって思い始めて…」
航生は結局、と前置きし、
「早紀に謝りたいって言うのは俺が楽になりたいだけだったんだなって。
あの時じゃなきゃダメだったんだよ。俺が自分の事しか考えれなかったあの時にしか…早紀は救えなかった」
航生は当時の自分を悔やむように、目を閉じた。
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