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目を開けて顔を見るのが怖かったが、作り笑いのまま片目ずつ目を開けると、
「何その笑顔。気持ちわりーな」
と声の主は言った。
航生が言ったとは思えない発言に美羽は驚いて目を開けた。
「なんだ…良(リョウ)か」
てっきり航生くんだと思ったのに…
よそよそしく作った美羽の笑顔が一転してやる気のない顔に変わった。
紛らわしい…
声の主は、友達の関根良(セキネ リョウ)だった。
良は美羽と同じ160センチくらいしか身長がなく、声変わりをまだしていないかのような高い声で話す男の子だ。
つり目の猫のような目で、航生と勘違いした美羽の様子を小馬鹿にしたような目で見た。
「声、どうしたの?やっと声変わり期が来たの?」
馬鹿にされた仕返しに美羽は嫌味で返した。
良は眉をピクリと上げたが、
「風邪引いたんだよ。病人をちょっとは労れよ」
と呆れたように言うと、スタスタと廊下を歩いて行った。
いつもの良は高い声で話すのに、航生と似たようなハスキーの声に美羽は少し違和感を感じた。
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