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航生くんじゃなくて少し安心したな。
美羽が良の背中を見送っていると、
「おはよう」
と後ろからチャイムの音にかき消されそうな声がした。
反射的に振り向くと、今、美羽の中で会いづらい人ベスト1位に輝く航生の姿があった。
「お、おはよっ」
普通にしようと思ったが予想外に大きな声が出て、美羽は自分でもびっくりした。
航生はフッと微笑み、
「遅れるよ」
と言い、美羽の肩を軽く叩いた。
美羽は叩かれた肩に手を当てギュッと握ると、『帰る』という選択肢を捨て、航生の横に並び、2年2組の教室に向かった。
どんな顔をして会えばいいのか悩んでいた美羽だったが、普段通りに接してくれる航生の姿に安心していた。
いつもと変わらない穏やかな癒し系の笑顔。
告白はダメだったけど、話せなくなったりしなくて良かった、と美羽は思った。
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