混迷

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「・・・と申しますと?」 ウィルの一言にその真意を薄々と感じ取っていたベッカーだが、あえて彼の口から聞き出すべく問い直すと、 「副長の思っている通りだ。察してくれ」 ウィルは自嘲気味に笑いながら返す。ベッカーにしてみれば、宇宙港やダルキュア星系に駐留していた艦隊に大損害が出たとは言え、幸いにも本星は被害を被っていない。 従って、アレクやミディアの身に危険が及んでいない筈なのだから、ウィルの言う『個人的感情』でそれほど動揺するとは思えなかったのだ。そう口には出さないが、じっと見るベッカーを一瞥したウィルは溜息をつきながら再び口を開いた。 「夢を見た」 「夢??」 こうなると益々わからなくなる。困惑した表情のベッカーを見て、ウィルは苦笑いしながら立ち上がった。そして、 「年甲斐も無く、妙にリアルで嫌な夢を見た。正夢になるのが怖いから今は離せないけどね。副長、準備を急いでくれ。俺は艦内を巡視して来る」 そう言うと、静かにブリッジを後にしたのだった。
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