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「元気がありませんな」
「ん?オイゲン、何の事だ?」
ウィルが出て行った後のブリッジではオイゲンが目立たぬよう、ごく自然な振る舞いで立ち上がってベッカーに話しかけた。
「大佐の事ですよ。そう誤魔化さなくても良いでしょう?」
鼻白んだ表情で返すベッカーに苦笑しながら言うと、
「まぁな。大佐は余り感情を表に出す方では無いが、さすがに陛下と殿下の安否が気になるのだろう」
ベッカーは軽く溜息をつきながらオイゲンを見る。
「いや、それだけでは無いでしょう?帝都に連邦軍の侵入を許し、なおかつ軍・民の宇宙港と多くの艦艇を失った以上、シルバラード元帥の責任も当然問われる訳ですからな」
部下達に聞かれないよう、声のトーンはごくごく低い。そう、オイゲンの言う通り、ウィルの父であるシルバラード元帥に対する責任論は当然の事であり、息子としても心中穏やかではないだろうと誰もが考え得る事だった。
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