混迷

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「落ち着け。レーダーは使い物にならないのか?」 「いえ、まだ何とか使えます。ただし、解析に若干時間を要しますのでレーダー上の距離と実際の距離に約2秒程、差違が生じてしまいます」 「つまり、2秒前のレーダー解析画像を頼りに航行しなければならんと言う事だな?」 「はい。副長の言う通りです」 オペレータの報告にがベッカーが重ねて確認する。オペレータの肯定的な表情を見たベッカーは軽く頷いてから無言でウィルに向き直る。判断を求めているのだ。 「・・・仕方ない、副長、第1戦速に減速。それから見張りを配し、レーダー解析の遅れをカバーせよ」 「了解しました。航海長、第1戦速に減速。それから大佐、探照灯はいかが致しますか?」 「敵と鉢合わせになったら簡単に発見されてしまう。探照灯の点灯は厳に禁じる」 「了解しました」 ベッカーが慌ただしく各セクションにウィルの指示を伝えた。探照灯の不点灯により見張りの精度は若干落ちるが、彼らの任務は隠密性が求められる。仕方の無い措置と言えるだろう。
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