混迷

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「航海長、どうやればそのような操艦が出来るのですか?小官のような非才の身ではさっぱりわかりません」 ガルディアスのブリッジでは見事な操艦を見せるヴィーザルの傍らで彼を補佐している航海士が尋ねる。 「ん?簡単な事だ。モニターには2秒前の解析データしか出ない。ならばそのデータから15秒前の様子をイメージしながら操艦すれば良いんだ。そうすれば、現実的には13秒稼げるだろ?」 ヴィーザルはモニターから目を離さずに答える。それを聞いた航海士はふぅっと溜息をつきながら計器類に目を向けた。ヴィーザルの言っている事がいまいち理解できていないようだ。 「まぁ、あれだ。宇宙空間ばかりではなく、惑星上でも舵を握ってみるんだな。そうすれば俺の言っている事が理解出来るさ」 ヴィーザルは再び口を開いた。彼は宇宙においては極めて優れた航海士であるが、地上においてはヨットを操って何度も大陸間単独航海を成し遂げたヨットマンであった。第38宇宙艦隊の将兵の中ではウィルやベッカー等、ごく一部の者しかその事実を知らなかったのだ。 「おっ、風が少し収まって来たな。すこしは楽になるぞ。操艦を変わってみるか?」 ヴィーザルはニヤリと笑いながら航海士を見た。
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