痛恨

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アレクの父、先帝センティウスは貴族制度のあり方に疑問を持っていたが、それを植え付けたのは当時の宮内尚書であったキンメル公爵であったのだ。 彼は帝国貴族達の傍若無人な振る舞いに対して国体の瓦解を危惧していた。当時、貴族達のやりたい放題の状態は頂点に達し、搾取され続けた平民の不満は爆発寸前であった。 キンメルはセンティウスに対し、圧倒的多数の平民が万が一にも革命という手段に訴えれば、軍首脳はともかく兵士達大多数もそれに加えあるだろう。さすれば帝国の国体などあっという間に崩れ去ってしまう事を必死に説いた。 歴代の皇帝の中でも比較的聡明であったセンティウスはそれに賛同し、緩やかな変革を断行した。まずは軍の抑えとして、名将としての誉れが高く、平民の圧倒的支持を得ていたシルバラード中将を大将に昇進させた上で宇宙艦隊司令長官職に抜擢。彼に軍内部に蔓延する平民を捨て駒と考えた無謀な作戦立案を徹底的に排除させると同時に彼等に対する待遇改善を行わせた。 シルバラードは人事にも手を加えた。能力のある物は貴族・平民の区別なしに昇進させたのだ。尤も、これは階級をステータスと考える貴族出身のお飾り将官はともかく、貴族出身であっても有能な実戦指揮官達の多くには受け入れられたのだが。
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