痛恨

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だが、出る杭は打たれる。シルバラードの急激な宇宙艦隊改革は旧態依然である他の軍組織の首脳達から猛烈な反発の声が上がったのだ。 無能な貴族出身の指揮官を排し、平民を平等に扱う彼の施策は平民の圧倒的な支持を得た。それによって、宇宙艦隊の士気と団結力は大いに上がったのだが、それによって地位を奪われた者達が結束して宇宙艦隊以外の組織と結び付き、シルバラード降ろしの動きを見せた。 彼等はその切り札として、軍情報部の長であったホーウッド中将を憲兵総監兼務とし、シルバラードの監視と失脚に追い込む材料を探すように命令した。情報部はその内部に謀略を司る特殊機関が存在しており、場合によってはそれを使っての暗殺も視野に入れていたのだった。 だが、貴族を中心とした軍上層部はここで致命的な過ちを犯してしまったのだ。彼等は貴族出身でありシルバラードと犬猿の仲のホーウッドを起用する事で彼等にとっての事態の改善を図ろうとしていたが、両者の仲違いが表向きの物であり、実の所は昵懇の仲である事を知らなかったのだ。 ホーウッドは表面上、シルバラードの失脚を図ろうと動きつつ、軍上層部の身辺調査を徹底的に行った。その内容は酷い物で、貴族達の贈収賄や職権乱用等、挙げればきりが無い程で調査を指示したホーウッドを呆れさせるのに十分な内容だった。そして調査結果を御前会議の場で公表した事で彼らの命運は尽きる事になる。
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