485人が本棚に入れています
本棚に追加
「…今、何処に?」
『わかりません。…それがわかっていたらとっくに帰って…くしゅっ』
少し拗ねた様な口調でそう告げると、ついでにくしゃみをされた。
「…! まさか薄着で出たんじゃないでしょうね!?」
つい声を荒げる。
自分の担当作家に、体調を崩されたくないからだ。
『少しだけ散歩するつもりでしたから…』
その一言で、先生が上着を何も羽織っていないのだと察した。
「…そこ、動かないで下さい。電話もこのままで」
慌ただしく着替えを済ませ、先生と繋がったままの携帯を手に家を出る。
街はすでに真っ白に染まっていて、雪は尚も降り続けている。
静かな街に、ザクザクと雪を踏み締めて走る音だけが響く。
(本当に…貴方と云う人は…)
電話で現在地を確認しながら、早朝の街を走る。
最初のコメントを投稿しよう!