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その日の天気は快晴、太陽が眩しく照りつける山奥の小さな小屋の前で、17歳位の少年【大空 真空】が空を見上げていた。首に七色に輝く不思議な石をかけ、白と青のスニーカーに、少し灰色がかかった白いズボン、その上には丈が短く袖が長く広い藍色の着物のような服を着ている。そして、腰には刀が二本。片方は柄も鞘も鍔も黒く作られていて、もう一刀は鍔がなく、鞘と柄は木で作られていた。
「真…」
真空を呼ぶ声が聞こえて、真空は後ろにある小屋のほうを向く。小屋の入り口の所に一人の女性が立っていた。元剣闘師であり真空の師匠【春野 妖香】である。
「妖香、体は大丈夫なの?」
真空は辛そうに妖香を見ていた。妖香は戸に寄り掛かっていて、立っているのも辛そうな顔をしてをしている。
「はい。…5年とは早いものですね。やはり、行ってしまうのですか?」
妖香は優しく、しかしとても寂しそうな瞳で真空を見つめていた。真空は妖香から目を反らし、また空を見上げた。
「あいつらとの、約束だから」
妖香は寂しそうな顔をしていた。それでも、無理に笑顔を作る。
「こちらに、来てくださいな」
真空は、妖香を見つめて歩み寄った。妖香は、真空が手の届く所まで来ると、寄り掛かっていた戸から離れ、真空に抱きつく。
「お元気で」
「…そんなこと言わないでよ。いつでも帰ってくるから」
耳元で囁く妖香を、真空は思い切り抱きしめる。
「それから、一つだけ約束してください」
妖香は顔を離して真空のまだ幼さの残る瞳を見つめる。
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