月に行きたいのですが・・・

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セミの鳴く夏は終わり、涼しい風が開けた窓から流れてくる。草木は赤や黄色にだんだん染まり、秋の身支度をしはじめた頃だった。 会社からの帰り道。ふと思った。 世界は僕が産まれた時から随分変わった。 化学や機械学はもちろんの事、まさか魔法の証明すらも成されてしまうとは夢にも思わなかった。 今では本物の魔法使いのように箒で飛んでいるヤツもいれば、パンを一瞬で肉に変えてしまうヤツもいる。 本当に世界は変わった。 でもなんで僕は相変わらず電車で通勤なんだろう・・・理由は簡単だ。あの時に努力が足りなかったのだ。 魔法を使うには努力が必要だ。化学が進んで魔法が合理化された今でも、魔法は誰もが使える物でもないし、むしろ半分以上は使えない。魔法を使えるのは産まれた頃からエリートか、それか相当努力をしたヤツだ。 子供の頃から魔法使いの学校の事を書いた小説もあったし、魔法を題材にしたファンタジー物の漫画や絵本もあった。当然、幼い頃の僕は魔法使いを夢見たし、なりたいとも思った。 その夢は中学生になっても変わらず持っていた。ちょうどその頃だった。イギリスの学者が魔法の存在を肯定化したのだ。
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