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ある所にケモナー荘という建物があった。そのケモナー荘に一台の車がとまった。
「ここが新しい俺の住まいか。ちょっと、不安だな。初めて、大学卒業してから初めてのアパートだしな」
と、一人の男が車から降りてきた。彼の名前は田中 靖という。彼はまず始めに大家に会いに行った。
「すいません。今日から住む、田中です」
と、田中は大家の部屋の扉の前で大きな声で言った。
「お前さんは二階の六号室だ。鍵はそのお隣の五号室に預かってもらってる」と、扉の向こうから聞こえてきた。田中はずいぶんいい加減だなぁと思いながら二階の五号室に向かった。
五号室に着くと、田中は扉をノックした。
「ちょっと待って」
と、声がして扉が開いた。
「隣に引っ越してきた。田中です。今日からよろしくお願いします」
「こちらこそ」
「……狼…」
と、田中は気を失ってしまった。
「人の顔を見て気を失うなんて失礼だな」
と、白い毛並みをした狼の獣人が田中をそう言いながら担ぎ上げ、部屋のなかに連れていった。
田中が気を失ってからしばらくたった。彼はゆっくりと起き上がった。
「ここは」
「俺の部屋だよ」
と、狼の獣人は布団に寝かせている田中に近づいて言った。
「……」
と、田中は少し後ろに下がった。
「恐がらなくてもいいよ。あんたを襲ったりしないし、ここの住人は悪い奴じゃない。人間がおれ等の姿を見て驚くのは無理ないだろうけどね。まあ、俺はジン。よろしく」
と、ジンは田中に手を差し伸べた。
「こちらこそ」
と、田中はジンの手を握った。
「家具はあるの」
「テレビと布団しか持ってこなかった」
「じゃあ、タンスを作らないと。明日、手伝ってあげる。木材たくさんあるし」
「ありがとう」
「今晩、家で晩飯くはない」
と、笑顔でジンが言った。
「そうするよ。残りの部屋の人に挨拶をしなくちゃいけないから、また夕方になったらくるよ」
「ここに住んでいるのは大家を除いて、三人だ。三人というのも今日きた君をいれてだけどな。四号室にいるから」
「四号室の人に挨拶をしてからまたくるよ」
と、田中はそう言ってジンの部屋から出ていった。
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