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何か言おうと振り返って・・・言葉を失った。
なぜならそこにいたのは、人間の服を着ている・・・。
「猫ぉっ!!」
そう。黒いローファー、薄青のYシャツに赤いネクタイ。
白いスーツとお揃いのシルクハットに手袋と
着ているものは人間と同じ。
なのに大きな青い目にピンとした耳とヒゲ、
フサフサの白い毛に包まれた顔は猫そのものだった。
彼はこっちの方に向き直ると、今度はにっこりと笑顔を
私に向けた(ように見える)。
「いや、笑ってしまってすまない。
だがそれだけ元気があれば大丈夫そうだな。」
(猫がきれいな日本語の発音をしている・・・。)
酸素を欲しがっている金魚のように口をパクパクさせるも、
驚きすぎて声が出ない。
「申し遅れた、私の名前はバルディラック=ガレッツ。
アニーマン時代の住人だ。君の名前は何というのかな?」
私は彼が近づくと上半身を少し反らし、
目を見開いて息を飲み込んだ。
「ち・・・智菜。早水(はやみ)智菜・・・です。
あの、バルディラックさ・・・。」
「バルドでかまわないよ。
敬称を付けなくて良いし、何より敬語も使わないでほしい。」
「え、あ、うん。・・・それで、ここはどこ・・・なの?」
おそるおそるそう聞くと、目の前にいる・・・バルド(?)は
腕を組み、片方の手で顎をさする。
「ふむ・・・。良い質問だ。だが、その話をするには場所が悪い。
とりあえず私の家へ行こう。」
「で、でも私、学校に行かないと・・・。」
熱心に授業へ参加しているわけじゃないけど、
行かなきゃいけないのは事実。
何より、早くこの場から去りたかった。
だけど悲しいかな。
バルドは立ち去ろうとする私の肩をガシッと掴んで引き寄せる。
そして自分の方へ向き直らせると、途方もない話を私に教えた。
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