旅立ちは突然に

2/9
前へ
/18ページ
次へ
「ジリリリリリ・・・パチン。」  無意識に目覚まし時計に手を伸ばし、止める。 瞬きを何回かしてやっとその文字盤に目を向けた。 時計の針はAM5:30を表示中。よし、いつも通り。  いつもと変わらない朝。 カーテンを開けると今日はすこぶる快晴らしく、 暖かな朝日がさんさんと私の部屋へ流れ込んでくる。  私は小さく伸びをした。 いつものように軽くラジオ体操もどきをし、着替えを済ませる。 1階にあるダイニングルームへと足を運んでドアをガチャリ。  開けた瞬間にパンの焼ける香ばしい匂いと コーヒーの香りが同時に私の鼻をくすぐる。 テーブルの方を見るとトースト・コーヒー・目玉焼きにサラダ付きという予想通りの、 だけど朝食を抜かすことが多い現代の家庭にしては 珍しいくらいたくさんの品数が並べられていた。 「あぁ、智菜。おはよう。」  声のした方を見ると、いつものごとくキッチンにて お弁当の準備をしている母さんの姿があった。 「おはよう、母さん。」 「朝の分の餌ならテーブルの上に置いてあるから、 覚めないうちにお食べ。」 「・・・・・・」  はぁ、またか。 「母さん。」 「あらやだ、癖なのよねぇ。つい・・・。」  けっして彼女は私が嫌いで言ったわけじゃない。 詳しいことは知らないけど生まれてこのかた16年間会ったことがない、 私にとってお祖母さんにあたる人によって・・・ 猫として育てられたんだとか。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加