旅立ちは突然に

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我が家は両親と私、それにませた中学3年と やんちゃな小学5年の弟達に 可愛い盛りの3歳の妹の総勢6人家族。 しかも1日中家にいる母さんを除いて、お弁当が必要だったりする。  たかがお弁当と侮るなかれ。 分量・栄養バランス・彩りを考えて作り、 なおかつそれを包んで渡すという作業までしなければならない。 1個や2個ならそれなりに余裕もあるだろうが、 5個ともなると時間との戦い。 ある意味、精神力勝負となってくる。 時間がある時は私も手伝ったりするんだけど、 今はそれだけの時間がない。 「じゃあ、ゴミぐらい出してやったらどうだ」と思うだろう。 だけどゴミ捨て場は駅に向かう道と反対の方向、 しかも10m先にある。 いつも通り時間ギリギリまで寝ていた私にはできない相談だ。 それを頭の中で確認し、ドアの方へと直る。 後ろを振り向けば母さんがすごくウルウルさせた目で こっちを向いていることだろう。 それを見ちゃったら終わりだ。 (動物ならなんの躊躇もなく近づくけど。) 電車にギリギリ間に合う時間帯、しかも自分の母親を相手に そんなことを引き受けようとする人はいない。 こういう時には逃げ出すのが1番・・・。 ガシッ! 「チ・-・ちゃんⅤ」  なんだけど、そうはいかないみたい。 「何?」 「お願~い、これ出してきてくれない?」  やっぱり・・・。 「やだ。だって私もう行かなくちゃ、 電車に間に合わなくなっちゃうよ。」 「すぐそこなんだからいいじゃない♪ それにぃ、その電車に間に合わなかったとしても 次のがあるんだから・・・。」 「大丈夫じゃないの!!母さんはあんまりこの町・・・いや。 村から出たことがないからわからないだろうけど、 ラッシュ時間でさえ1時間に1本しかないんだから!」  興奮して言い切った次の瞬間、 我に返って余計に墓穴を掘ったことに気づく。 母さんの目が、いつもより水気が多くなってきた。 (保湿成分は肌だけで十分だよ・・・。) 「あー、もう・・・泣かないの。」 「だってぇ・・・。」  あーぁ、口から出るもの以外全部出ちゃってる・・・。 「わかった、わかった。出してくるから泣かないで・・・ね?」  そのとたん、彼女の顔が晴れて。 「ホント~♪うれし~、ありがとー。じゃ、これよろしくねーV」 と、袋を突き出してきた。 (こ、この人は・・・!)
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