旅立ちは突然に

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 黄色と黒の縞模様の絨毯、 狐を思わせるような薄茶色のソファー、 象のようにざらっとしている感触の灰色の壁・・・。 中に入った私は一瞬、狩猟好きな趣味の悪い成金が 所有している車両に乗ってしまったのかと焦った。  とりあえず空いている席へ。 辺りを見回してみてさらに仰天、 なんと天井からシャンデリアが吊り下がっているじゃないか。 (うわ~・・・やっぱり個人が所有している列車だったのかも。 見つかったら怒られるだろうな・・・ レールの上に下ろされたらどうしよう?)  そのすぐ後で無用なものになってしまう心配を うんたらかんたらと考えていたその時、 個人の私室を思われるそれ全体が大きく揺れた。 油断していた私は前のめりに倒れ、顔面を床にガツンッ! 「~~~~っ!」 (なんなのよもう!)  窓の外を見ると景色が変わっていない。 どうやら止まっている模様。 (事故・・・?)  ガクン!  再び車体が揺れる。 またも油断していた私は身体が通路へ放り出され、 今度は全身打撲になりかけた。(何とかそれは免れたけど。)  列車は徐々にスピードを上げていく。 最初はゆっくりと・・・通常の速さで・・・。 言葉に表せないような不安が、ざらりと私を撫でる。 (何、この電車・・・?)  ふと窓の外を見ると次から次へと流れていくように 窓の外へと消えていた景色が、 文字通り溶けるようにそこから消えていく。 気づいた時にはもうそれはレールの上ではなく、 現実ではありえないような斑模様の空間を走っていた。 「・・・!」  あまりにも速過ぎる速度と見たことのない景色への恐怖心。 それが意識をブラックアウトさせた。気を失っている間にも、 不気味な乗り物は私を乗せて彼の地へと誘っていく・・・。
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